この5ステップは、調達チャネルによって具体的な手順が異なります。
事例1:国内(J-クレジット)× 取引所(東証市場)の場合
- 想定目的: GX-ETSの目標達成(コンプライアンス)。コスト効率を重視。
- 実務フロー:
- 準備(最重要): J-クレジット登録簿システムで自社口座を事前に開設(数週間)。並行して、東証の市場参加者(証券会社など)と契約し、取引準備を完了させます。
- 実行: GXリーグの報告期限が迫った四半期末などに、東証市場で「J-クレジット(省エネ等、最も安価な区分)」を必要なトン数だけ発注・約定します。
- 決済・移転: T+2営業日後、J-クレジット登録簿口座にクレジットが入庫(着金)します。
- 活用: 自社の登録簿口座内で、GX-ETSの報告目的(温対法報告など)で「償却(無効化)」手続きを行います。
- 報告: 償却の記録を添付し、GXリーグ事務局へ報告します。
- 特徴: 手続きが標準化されており、D.D.の手間が少ない。迅速かつ透明な価格で調達が完結します。
事例2:国内(J-クレジット)× 相対取引(OTC)の場合
- 想定目的: 自社製品のカーボンオフセット(マーケティング)。「生物多様性保全」など、特定の「コベネフィット」を持つ「森林」クレジットが欲しい。
- 実務フロー:
- 準備: J-クレジット登録簿システムの口座を開設します。
- 打診: 複数の仲介事業者(商社、コンサル)に「コベネフィット付きの森林クレジット」の調達を打診します。
- D.D.(最重要): 提案されたプロジェクトの資料(森林の所在地、管理方法、コベネフィットの内容)を厳格に審査(D.D.)し、自社ブランドと親和性の高いプロジェクトを選定します。
- 実行: 価格と数量を交渉し、「売買契約書」を締結。決済後、登録簿口座でクレジットの移転を受けます。
- 活用: 製品の販売開始に合わせて、調達したクレジットを「償却」します。
- 報告: 償却証明(シリアル番号)を製品ウェブサイトやPR資料に明記し、「本製品は〇〇(地域名)の森林保全プロジェクトのクレジットでオフセットしています」と報告します。
事例3:海外(VCM)× 相対取引(OTC)の場合
- 想定目的: 2040年のSBTネットゼロ達成に向けた「除去」クレジットの将来分確保。
- 実務フロー:
- 準備: VerraまたはGold Standardの登録簿システムで口座を開設します(英語での手続き、数週間〜)。
- 打診: 国際的な仲介事業者や商社に「SBTネットゼロ適合の『除去』クレジット」を打診します。
- D.D.(最難関): 提案されたクレジットが、ICVCMの「CCPラベル」を取得しているか、ヴィンテージは新しいか、SBTiの要求する「除去」の定義(例:DACCSや植林)に合致するかを厳格に審査します。
- 実行: 「米ドル(USD)」建てでの売買契約(国際法務)を締結します。第5章で学んだ「長期購入契約(オフテイク契約)」を締結する場合もあります。
- 決済・移転: 国際送金後、Verra等の登録簿口座でクレジットの移転を受けます。
- 活用(将来): 2040年に、保有するクレジットをSBTネットゼロ報告のために「償却」します。