日本政府の構想は、GX-ETSや東証市場に留まりません。2023年5月に成立した「GX推進法」に基づき、「成長志向型カーボンプライシング(CP)構想」の全体像が示されています。これは、企業の脱炭素投資(GX投資)を促すための「アメとムチ」の政策パッケージです。
アメ(先行投資支援)
政府は、今後10年間で150兆円超の官民GX投資を実現するため、まず20兆円規模の「GX経済移行債」を発行し、企業の先行的な脱炭素投資を強力に支援します。
ムチ(将来のコスト負担)
そして、この「GX経済移行債」の償還財源として、カーボンプライシング(炭素への価格付け)が段階的に導入されます。
- 2028年度~ 炭素に対する「賦課金(化石燃料賦課金)」の導入
化石燃料の輸入事業者等に対し、そのCO2排出量に応じた賦課金の徴収が開始されます。これは実質的な「炭素税」であり、コストとして川下の企業や消費者に転嫁されることが予想されます。 - 2033年度~ 排出量取引制度(ETS)の「有償化」
GX-ETSにおいて、発電事業者(電力会社)を対象に、排出枠(排出する権利)が段階的に「有償(オークション=入札)」で割り当てられるようになります。
今後の展望として、日本企業は、2026年のGX-ETS本格稼働、2028年の賦課金導入、2033年の有償化という明確なロードマップを前提に、経営戦略を立てる必要があります。カーボン(炭素)は、もはや「ゼロ円」の存在ではなく、明確な「価格」と「コスト」を持つ経営資源へと急速に変化しています。